『ソナチネ』、『HANA-BI』、『アウトレイジ』シリーズなど、映画監督として数々の名作を残してきた北野武監督が6年ぶりに新作を公開するということで話題になっている映画『首』が11月23日に公開されました。
原作は北野武監督自身が書いており、映画の脚本は30年前から着手していたそうです。
30年とは凄い執念…!
ビートたけしさんが主演を務め、西島秀俊さん、浅野忠信さん、加瀬亮さんなど日本が世界に誇る俳優がそろい踏みした、オールスターキャストの演技も見どころになりそうです!
一部本編のネタバレに踏み込む記述があるため、鑑賞前の方はお気をつけください
映画『首』あらすじ
天下統一を掲げる織田信長は、毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と激しい戦いを繰り広げていたが、その最中、信長の家臣・荒木村重が反乱を起こし姿を消す。信長は羽柴秀吉、明智光秀ら家臣を一堂に集め、自身の跡目相続を餌に村重の捜索を命じる。秀吉の弟・秀長、軍司・黒田官兵衛の策で捕らえられた村重は光秀に引き渡されるが、光秀はなぜか村重を殺さず匿う。村重の行方が分からず苛立つ信長は、思いもよらない方向へ疑いの目を向け始める。だが、それはすべて仕組まれた罠だった。
果たして黒幕は誰なのか?
映画『首』公式サイト (kadokawa.co.jp)
権力争いの行方は?
史実を根底から覆す波乱の展開が、
“本能寺の変”に向かって動き出す―
誰もが知る、本能寺の変を題材にした時代劇映画です。
ビート武さんが秀吉を演じるとなると、史実とはかなり年齢の序列も異なってくるので、劇中でどう見えるか気になります。
秀吉の弟の秀長の年齢差は3歳とされているけど、ビート武さんと大森南朋さんは25歳差…
映画『首』レビュー
ここから、私が実際に本作を鑑賞した上での感想をまとめていきます!
時は戦国時代、首を獲るのは誰か
天下統一を掲げる、織田信長(加瀬亮)は、毛利軍、武田軍、上杉軍、京都の寺社勢力と激しい戦いを繰り広げていました。
しかし、家臣の一人である荒木村重(遠藤憲一)が謀反を起こし、信長は激怒します。
身を案じて、姿を消した村重を捜索し、信長の下へ引き渡すよう、羽柴秀吉(ビートたけし)、明智光秀(西島秀俊)を集めて、自身の跡目相続を餌にして、村重の捜索を命じるのです。
信長を演じる、加瀬亮さんの演技がぶっ飛んでいてすごい!
秀吉は弟の秀長(大森南朋)と軍師・黒田官兵衛(浅野忠信)とともに、策を練ります。
その一方、村重と親しい仲であった、光秀は複雑な想いを抱えているのでした。
男性同士の恋仲の関係が描かれていたのに驚いた!
手下に遣われるものたちの働き
天下統一を目論む信長と跡目争いに奔走する光秀と秀吉が、メインで描かれていきますが、本作はそれらの手下にあたる人々の活躍が目立ちます。
中でも本作で重要な役割を担うのが、元忍(しのび)芸人・曽呂利新左衛門(木村祐一)です。
キム兄は北野映画初出演だけど、いい味だしてた!
千利休の配下であった曽呂利でしたが、秀吉に見出されたことによって、村重の捜索を命じられます。
そこで、曽呂利の相棒的な存在になるのが、百姓の難波茂助(中村獅童)。
秀吉に憧れるあまり、身の程をわきまえず戦時下に身を預けていく存在です。
秀吉と鏡映りのようなキャラクター!
飄々とした振る舞いの曽呂利と、少し間が抜けた茂助の捜索が偶然にも身を結び、村重を捉えることに成功します。
村重の身柄は、光秀の下へ引き渡されますが、恋仲のような関係だった村重を想うと情が湧いてきて、村重を匿うことになります。
村重の行方が分からず、苛立ちが増す一方の信長。
信長は、狸と呼ばれるほど腹の内が見えない徳川家康(小林薫)が黒幕だと考え、光秀に家康の暗殺を命じるのでした。
きたる本能寺の変!血生臭い跡目争い
かねてから信長を蹴落とすことで、天下を獲ることを目論んでいた秀吉はこれをいい機会だと捉えて、家康の暗殺を失敗させることで、信長と光秀の対立を煽ることを考えます。
家康暗殺の阻止の命令を受けた、曽呂利と茂助はこれをなんとか成し遂げて、信長と光秀を苛立たせます。
村重を匿っていることを知っていた秀吉は、信長の跡目相続が建前だという手紙を利用して、光秀に信長の暗殺をそそのかします。
裏切りに裏切りが重なるドロドロした展開…
一方、家康をなんとしても排除したい信長は、茶会と称して本能寺に招く計画を光秀に漏らします。
信長の首をとる絶好の機会を得られたことから、愛憎入り乱れる心情を振り払い、暗殺する決心をします。
ついに本能寺の変へ!
すべてを察した信長は、森蘭丸と無理心中のような形で自害をしました。
山崎の合戦へ!秀吉と光秀の直接対決!
信長亡き今、天下を獲るためにさらに奔走する秀吉。
光秀は保身のために、家康の暗殺を目論みますが、ものの見事に掻い潜られます。
替え玉作戦が上手くいきすぎて面白い(笑)
天下の行方は、秀吉と光秀の直接対決によって決まることに。
俗に言う山崎の合戦を前に、面白みがなくなってきたと戦場を跡にする曽呂利は、千利休邸で家臣に襲われ亡くなります。
大迫力の合戦が繰り広げられる中、茂助は逃げ惑う光秀を見つけます。
このシーンの映像の迫力がすごい!
弱り切った光秀の首を獲り喜ぶ茂助でしたが、あっさりと他の兵によって殺されてしまいます。
大量の死者を出した、合戦後に光秀の死を確認するため、首を捜索する秀吉一派。
いくつか並べた首の中に、秀吉は茂助の首だと認識します。
しかし、肝心の光秀の首が見つかりません。
苛立つ秀吉は、
「光秀が死んだことがわかれば首なんかどうだっていい!」
そう言い放ち、誰のものかも分からない首を蹴り飛ばすのでした。
『首』ネタバレあらすじと感想 構想30年!北野武監督作品、待望の新作! まとめ
映画『首』は何度も映像化されている「本能寺の変」を北野武らしく、暴力と乾いた笑いによって唯一無二のエンターテインメントに昇華した時代劇でした。
- 信長の家臣である、荒木村重の謀反によって沸き起こる血生臭い跡目争い
- 裏切りに裏切りが重なるドロドロした展開
- 加瀬亮演じる織田信長のぶっとび具合が大きなみどころ
- 本能寺の変を北野武なりの解釈で描いた唯一無二のエンターテインメント作品
歴史ものは人によって好みが分かれそうですが、最低限「本能寺の変」だけ知っていれば、楽しめるように構成されていると感じました。合戦のシーンのスケールは今の日本映画で同じ迫力で撮れる人は他にいないかと思います。
ぜひ、映画館で鑑賞していただきたい映画でした!