映画としては『事故物件 恐い間取り』以来となる亀梨和也さんの主演作で、サイコパスと連呼する予告編が話題になっている映画『怪物の木こり』が12月1日に公開されました。
監督はバイオレンス映画の巨匠と呼び声高い三池崇史監督です。
サイコキラーものが得意な三池監督だから楽しみ!
一部本編のネタバレに踏み込む記述があるため、鑑賞前の方はお気をつけください
映画『怪物の木こり』あらすじ
絵本「怪物の木こり」の怪物の仮面を被り、人間の脳を奪い去る連続猟奇殺人。
映画『怪物の木こり』公式サイト (warnerbros.co.jp)
その捜査線上に犯人が唯一殺し損ねた男、弁護士・二宮彰の名が浮上する。
実は二宮は目的のためには殺人すらいとわない冷血非情なサイコパスだった。
総力を挙げて捜査を進める警察と、犯人への逆襲を狙う二宮。先に真相に辿り着くのはどっちだ?
サイコパスVSシリアルキラー…
驚愕の結末まで、この狂気は止まらない!!
亀梨和也さんが演じるサイコパスの弁護士が突然シリアルキラーの標的になり、返り討ちを狙うというストーリーです。
予告編の印象では、血生臭い殺し合いが描かれるかと思いましたが、意外と丁寧なミステリー要素もあり、グロテスクな表現も控えめだったので、幅広い層が楽しめる作品と感じました!
亀梨さんのクールな佇まいがよかった!
映画『怪物の木こり』レビュー
ここから、私が実際に本作を鑑賞した上での感想をまとめていきます!
過去に起きた陰惨な事件…
山奥にある東間翠(柚希礼音)の屋敷に、子供が立てこもりされていると情報を聞きつけて、潜入する警察一派。
重い扉を開けてそこには、「怪物の木こり」という絵本を淡々と読み続ける子供でした。
物々しい雰囲気と使用感がある手術器具に警察は何をしたか問い詰めますが、東間は答えず自分の首を切ります。
時は経て、31年後。
山奥にて高級車を悠々自適に運転する二宮彰(亀梨和也)は、尾行されていることに気付いて、猛スピードでカーブを曲がり、追手の車を横転させます。
車の横転の迫力がすごい!
尾行している男は、杉谷総合病院のスタッフで、病院で不自然な診断書を見つけて、防犯カメラを見ると二宮が映っており怪しく感じて追ってきたと言いますが、二宮を前にこのあり様。
「助けて…」と懇願する男に意も介さずに、二宮はガラスの破片を使ってあっさり殺害するのでした。
血の量が三池監督っぽい!
そんな二宮と共犯関係なのが、杉谷総合病院院長の息子・杉谷九郎(染谷将太)です。
彼は二宮がサイコパスであることを知る唯一の存在で、杉谷もまたサイコパスで二宮の殺害の後始末をしていました。
染谷さんの演技がとてもいい!
情報統制ができていないのではないか?と問い詰める二宮に、飄々とした雰囲気で「防犯カメラの記録は消しているから、大丈夫」と答えます。
「大丈夫ではないから来たんだろ」といら立ちを隠せない二宮は、足元に落ちていたバスケットボールを監視カメラに投げつけて破壊します。
クールに命中させていて、さすが野球経験者!
連続殺人事件に巻き込まれる二宮
その日の帰り道、病院の駐車場にて二宮は怪物のようなマスクを被った何者かに襲われます。
なんとか生きながらえましたが、二宮は頭蓋骨を負傷してしまいます。
マスクが不気味で怖い…
実はそれと同じような事例が立て続けに起こっており、警視庁は捜査の真っ最中でした。
プロファイラーの戸城嵐子(菜々緒)は、同一犯の可能性が高く、動機が必ずあり秩序的なさまはサイコパス傾向にあると分析します。
被害者の頭を斧で割り、脳をえぐり取られているため、メディアでは「脳泥棒」と報道されていました。
それぞれの被害者との関連性も洗い出し、警察は事件解決に向けて捜査を進めます。
ここから本格的にミステリーが始まる!
病院での検査結果によって、二宮の脳内に「脳チップ」が埋め込まれていることがわかりました。
その事実を知らなかった二宮は少し狼狽えますが、医者に「知らなかったのか?」と聞かれると上手くごまかします。
なんか不気味な伏線…
そんな中、婚約者の荷見映美(吉岡里帆)が見舞いに来て、「無理して私と付き合わなくていい」と伝えます。
映美の父は亡くなっており、ビルからの投身自殺とされましたが、映美は他殺を疑っていました。
しかし、何を隠そうその犯人が二宮だったのです。
甘いマスクで平然と「僕の気持ちは全く変わっていない」と伝える様子は、まさしくサイコパスのようです。
映美の父親の荷見法律事務所のシニアパートナーになるのが、二宮の目的でした。
まさしく動機が明確で秩序的…
そして、刑事の乾登人(渋川清彦)は、被害者の共通点が児童養護施設の出身であることを突き止めます。
しかし、それぞれ出身の施設がばらばらだったため、その後の解決の糸口は掴めないままでした。
戸城は上司から、乾がかつて起こしたトラブルの話を聞きます。
かつて乾は、保険金目当てで妻を殺害した疑いのある剣持武士(中村獅童)の事件を捜査していましたが、剣持は証拠不十分で不起訴になっていました。
そこで1人諦めなかったのが、乾でした。
しかし、妻の父親に無礼な発言を浴びせる剣持に我慢ならず、乾は手を出してしまい更迭されたのです。
二宮の過去
そして、二宮もまた施設出身者なのでした。
脳チップを埋められたのが、施設に入所する前だとわかります。
杉谷によると、それは違法手術で二宮が埋められていた場所は共感性に関わる箇所だといいます。
それでサイコパスだったのか…?
たまたま、「怪物の木こり」の映画版Blu-rayの広告を見つけた二宮は、帰宅後に購入した原作の絵本を読み、木こりに化けた怪物が村人たちを食べていく物語だと知ります。
ストーリーとリンクしてきた!
二宮は、退院後夜道をジョギングしていると、親子の姿を目にします。
泣き止まない娘の様子に何かがフラッシュバックする二宮は、苦しそうに頭を抱えます。
そして、そこにあの怪物が再び襲いにかかってくるのです!
持ち前の身体能力を活かして、なんとか二宮は逃げ切ります。
帰宅後、二宮の自宅に映美が見舞いにきます。
少し話していると、そこにインターフォンが鳴り響き、戸城と乾が二宮邸に訪れるのでした。
捜査をする中で、戸城は二宮に施設出身であることを確認します。
連続殺人はこれまですべて、室内で行われていたが、屋外でも殺人が起きるようになり、犯人の焦りを感じ取った戸城は、直近で大怪我を負った二宮が犯人のターゲットになっているのでは?と考えるようになりました。
少しずつ真相に近づいているのか…?
しかし、何か隠しているように感じた2人は、二宮を怪しく感じるようになります。
戸城と乾の取り調べから、脳泥棒は自分を襲った者と同一人物だと二宮は悟ります。
狙いは恐らく脳チップ
脳チップが埋め込まれていることを知っている担当医を二宮の別荘に呼び出して殺そうとするも、二宮は気分が悪くなり、とどめを刺すことができません。
31年前の事件
杉谷は31年前にあった事件、通称・東間事件のことを調べるようになります。
脳外科医の東間が、子供たちをサイコパスにするために、脳チップを埋め込んでいたというものでした。
恐ろしい実験…
二宮は、恐ろしい人体実験の生き残りである可能性が高いとわかりました。
杉谷は、脳泥棒に襲われた衝撃で脳チップが壊れて、二宮は普通の人間に戻っていくのではないかと推察します。
一方、警察側もこの事件と今回の脳泥棒に関連性があることを掴んでいました。
当時の事件を担当していた刑事が、今回の案件に協力することに。
過去と現在が繋がってきた…
そこで、乾と確執がある剣持が脳チップを埋め込まれた最初の犠牲者だと分かり、警察は剣持を保護しようとします。
警察からの要求を拒否する剣持は、「自分を殺すとしたら恨みを持っている乾って刑事の方が怪しいぞ」と、うそぶくのでした。
人間の感情
映美の父を殺害した現場に花を持ってきていた二宮。
そこに映美が現れて「ちゃんと父のことを弔ってくれていたのね」と二宮を見直します。
二宮は自分のルーツである、児童養護施設を訪れることにしました。
いつも二宮が、「おひさまあたれ」を繰り返し歌っていたという話を、職員から聞かされる2人。
ちょっとかわいい一面も
昔はやんちゃだったが、角がとれて丸くなったと職員は二宮に伝えます。
映美は外で園の子どもたちと「おひさまあたれ」の歌を歌っていましたが、その温かい光景を見るうちに、二宮の目から涙がこぼれてきます。
自分でもなぜ泣いているかわからない二宮は、映美からそっと肩を抱かれるのでした。
帰宅して「怪物の木こり」を読んで、犯人の検討がついた二宮。
しかし、そこに怪物のマスクを被った男が襲い掛かってきます。
男を取り押さえてマスクをとると、それは杉谷でした。
このシーンはびっくりした!
「やっぱり殺せないのか」と残念がる杉谷でしたが、二宮は犯人の正体がわかったと言い、杉谷に手術の準備をするように伝えます。
すると、二宮のスマホに映美が人質に取られている写真と「東間の屋敷に来い」というメッセージが送られてきて、急いで現場に向かうのでした。
いよいよ事件の真相へ 犯人は誰?
一方、剣持の行方が分からなくなったという警察一同。
強引な捜査でチームから外されていた戸城は、上司から「乾はお前のプロファイリングに合うか?」と連絡が届きます。
乾がまさかの…
乾の自宅アパートを強行突破する警察一同でしたが、何の気なく乾は帰宅してきます。
連絡が繋がらなかったのは、剣持の妻の3回忌だったということで墓参りに行くために携帯の電源を切っていたのでした。
すべてを察した戸城は慌てて、心当たりがある場所へ向かいます。
一体どうなる!
二宮が東間の屋敷につくと、そこにいたのは剣持でした。
剣持は、乾から殴られたことをきっかけに、脳チップが壊れて精神が正常に戻っていった結果、自分が犯した罪の重さに絶望したと語ります。
脳チップが入ったサイコパスたちを殺していくことでしか、償う方法がないと悟った剣持はこれらの諸行を働いたのでした。
そして、二宮が過去に行ってきた罪を言い当てていきます。
もちろん、映美の父親殺しのことについてもです。
サイコパスの悲しい末路…
しかし、二宮は罪の意識も抱えて生きる人間に興味があると、自分は何があっても生き抜いてやると宣言します。
そこで、「俺とは違うな、あきら」と優しく呼びかけられ、剣持は幼いころ自分を庇ってくれたたけしくんだったと気付くのでした。
普通の人間に戻れるといいなと言い残して、剣持は煙草に火をつけて屋敷を燃やしました。
衝撃のラスト!
剣持の焼身自殺の翌日、戸城が二宮を訪ねます。
あなたも東間の被害者だったのではないかと。
言い訳をしながら生きるつもりはないと、堂々とした様子の二宮ですが、戸城は「あなたをいつか必ず逮捕する、そのときまで絶対に死なないで」と言い残します。
この感じは続編もあるのか…?
その場で、手術をせずに普通の人間に戻ることにしたと杉谷に伝える二宮。
帰宅後、起きていた映美を抱き寄せると、なんと映美にナイフで刺されてしまいます。
そこで、二宮は映美の首を絞めて、「これで正当防衛になるから、あの女性の刑事のところへ行け」と伝えます。
「怪物の木こり」の一説を静かに唱えて、二宮は自宅に1人残されていくのでした。
ラストカットがカッコよかった…
『怪物の木こり』亀梨和也がサイコパス役を熱演!先が読めないミステリー!
ところどころ展開に疑問はありましたが、亀梨さんの存在感と三池監督のエッジが立った演出が光った娯楽作だと感じました!
- 亀梨和也がサイコパスの役を冷淡に好演していた
- 生粋のサイコパスはほとんど登場せず、脳チップが人格に影響を及ぼしていた
- サイコパス同士の殺し合いより、丁寧なミステリーという印象
予告編の印象で辟易する人もいるかもしれませんが、実際に見てみると意外と繊細な作品でもあることがわかります。
久しぶりの亀梨さんの主演作で魅力が存分に発揮されているので、ぜひ劇場で鑑賞していただきたいです!