11月3日(金)より公開となった映画「すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ」。
2019年に公開された「すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」で大人たちの人気に火がついたすみっコぐらしの映画第3弾となる今作。
今回はすみっコたちが工場でおもちゃを作るということで、可愛い姿に癒されることを期待して映画館に向かいました。(11月6日鑑賞)
長野県の映画館に行ったのですが、10人ほどのお客さんしか居なかったので、ゆったり鑑賞できましたよ!
映画のあらすじとネタバレ感想を書いていきたいと思いますので、まだ映画を鑑賞されていない方やネタバレを避けたい方はご注意ください。
映画「すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ」あらすじ
森のはずれにある古くなった工場で、“くま工場長”にさそわれ、 おもちゃ作りをはじめたすみっコたち。みんながとくいなことを活かして、
『映画すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ』公式ページ
上手にぬいぐるみを完成させる。くま工場長にほめられてやる気まんまんになった すみっコたちは、おそろいの制服やおいしいごはん、
すみこみの部屋を用意してもらい、次から次へとおもちゃを作る日々に。 そんな中、すみっコたちの町に出荷されていったおもちゃが、 あちこちで動きはじめる。この工場には、
なんだか”ふしぎ”なところがあって・・・?
大人が観るとホラー映画!?ネタバレ感想
今回、すみっコぐらしの新作映画に期待して劇場に向かった大人は多いはずだと思います。
というのも、第1作目の映画「すみっコぐらし とびだす絵本とひみつのコ」で子供向けの映画とは思えないほどの深いストーリー性が反響を呼び、“泣ける子供向け映画”として話題になったことがあるためです。
かくいう私も、1作目ですみっコたちの健気な姿と優しい心に癒され大好きになったので、映画が公開されるたびに劇場に足を運んでいます。
そして今回、どんな感動が待っているのかなとワクワクしながらメイク薄め(号泣するので)で映画館に向かった私は、良い意味で、ショックを受けました…。
導入はいつもの可愛いすみっコぐらし
見慣れている方はいつもの導入ですが、すみっコたちの紹介から始まります。
今回はしろくまさんが主役らしく、しろくまさんの幼少期のシーンが印象に残っています。
お母さんしろくまと兄弟しろくまが出てきますが、2人はもふもふ。
しろくまさんはなんとなく毛がツルッとしているから、寒いのが苦手なのかな…
可愛い。守りたい♪
友達のぺんぎんさん(本物)が訪ねて来て、その後もいつものように癒しの時間を提供してくれるすみっコたち。
ああ、このまま平和に幸せでいてほしい。しかし、その願いはあっけなく地に落とされます。
だんだんと不穏な雰囲気に…
しろくまさんが幼少期から持っていたぬいぐるみを届けに来たのは良いけれど、途中で装飾のボタンを落としてしまったペンギンさん。
みんなで探しに出かけると、ぺんぎんさん(本物)はもぐらの穴に落ちてはぐれてしまい、他のすみっコたちは廃工場にたどり着きます。
そこで知り合ったくまさんの工場長に手先の器用さを褒められたしろくまさん。
手芸が得意だったんだね…可愛い、守りたい…。
次の日、くま工場長がやってきて、すみっコたちを工場でのおもちゃ作りにスカウトします。
「手先が器用!」
「観察力がある!」
「みんなすごい!天才!」
と次々に褒めちぎり、お揃いの作業着をもらい、まんざらでもなくなったすみっコたちは言葉巧みに工場へと連れられていきます。
この時の私の心情は
「エ…労働させられる…って、コト?」
心配でならない35歳既婚。
そんな心配をよそに、すみっコたちは楽しそうにおもちゃを作り始めます。
夕方にはおもちゃを作り終えて、豪華なご飯を用意してもらい、個々のお部屋までついています。
「まるでホテルみたい!」
と、感動するすみっコたち。
次の日からも、朝はラジオ体操をして、いそいそとおもちゃ作りに励みます。
生き生きとして楽しそうなすみっコたちですが、大人は気づき始めているでしょう。
これが労働社会の入り口だということに…
もうやめたげて!強制労働させられるすみっコたち
最初は楽しく働いていたすみっコたち。
しかし、徐々にくま工場長の様子がおかしくなっていきます。
「今のままでは生産数が下がる一方だ…」
とか言い始め、まるでブラック企業の社長のように、すみっコたちにきつくあたり始めます。
リアルすぎるよ、つらいよ…。
しかし、優しいすみっコたちは抵抗することもなく言われるがままにノルマを達成しようと頑張ります。
最初は50個作りましょうと言われていたノルマですが、エスカレートした結果、1000個にまで膨れ上がりました。
肉体にも限界が来て、ミスをしたりと、もう見ていられない…
そしてついに、ストライキを起こすことを決意したすみっコたち。
街ではホラー映画さながらの風景が…
「そういえば、作ったおもちゃはどうなっているんだろう」
と思い始めた大人たち、そうだよ、ちゃんとそこも伏線になってるよ。
説明し忘れていましたが、作ったおもちゃはふしぎなスタンプを押すと動き出します。
ざっそうさん、たぴおかさん、えびふらいのしっぽ、にせつむりさんはストライキの騒動中にはぐれてしまい、偶然街に辿り着きます。
するとどうでしょう、街では動き出したおもちゃたちが住民を困らせていました。
「遊んでー、遊んでー」
と、まるでゾンビのように歩き回るおもちゃたち。
こ、こわ…ホラー映画じゃん…
どうなっちゃうのこれから!?子供向けらしからぬ作風は今回も健在ですが、流石にこれは予期していなかったことの連続で頭がついていかないよ!
守りたい…すみっコたちの優しい心
ざっそうさんたちはもぐらと仲良くなっていたぺんぎんさんと合流し、地下から工場へ戻ります。
やっとこさ、しろくまさんたちとも会えて一安心。
みんなはくま工場長に会いに行きますが、なんとくま工場長もおもちゃだったのです。
なんとか外に出ようと試みて、試行錯誤する姿はまるでアクション映画のワンシーン。
ラジコンに乗ったとんかつさんとえびふらいのしっぽは、華麗なドライブテクニックで警備のおもちゃをかわします。
他にも飛行機のラジコンに乗ったすみっコたちも居て、ハラハラドキドキ!
さて、くま工場長がおもちゃなら、誰が黒幕なのか…。
それはなんと、工場そのものでした!
すみっコたちを追いかけ始めた巨大な工場。
「いかないで、もどってきて」
と、悲しそうなことを思っていますが、顔は怒っています。
怖い。
走っているとついに工場は壊れ、動かなくなってしまいました。
ドタバタしているうちにはぐれてしまったしろくまさんを工場の中へ探しに行くすみっコたち。
すると、鍵のかかった部屋を見つけて中に入ります。
その中は、工場自身と、工場の思い出が詰まった空間でした。
最初の頃は小さな工場で、みんなが楽しく働いていて、おもちゃをもらった子供たちも幸せそう。
工場は、みんなを笑顔にすることがとても嬉しかった。
しかし、生産数が増えて工場も大きくなると、何があったのかはわかりませんが、次第に廃れていき、最後には電源が落とされて廃工場になってしまった。
そんな中、偶然に工場のスイッチを押したしろくまさん。
工場は息を吹き返し、またみんなを笑顔にしたくておもちゃを作ろうと、従業員にすみっコたちを選んだのでした。
一連の騒動ですっかりボロボロになってしまった工場は、ぽろぽろ涙を流しながらこう言います。
「壊れたもの、いらなくなったものは、捨てられてしまう」
みんなを笑顔にできなかった自分には、もう、存在価値はないのだと言っているようでした。
しかし、しろくまさんが持っていた幼少期からの思い出のぬいぐるみは、実は工場で作ったものでした。
ボロボロになってツギハギだらけだけど、ずっと大事にぬいぐるみを持っていたしろくまさん。
他のすみっコたちも、仲間だよ、と言って泣いている工場を抱きしめます。
ええ…なんて優しいの…愛…。
でも、私なら、許せないな…。
やっぱり最後はハッピーエンド?
なんとなく、モヤモヤした気持ちが消えずにいるのは、私だけでしょうか。
みんなを笑顔にしたかった工場の気持ちは優しいものだと思います。
でも、すみっコたちを過重労働で追い詰めたことが、どうしても引っかかってしまう。
その原因を、私は考えました。
私は、あるトラウマを抱えています。
それが何かはここではお話しすることではありませんが、それが原因で人間不信になり、自分を追い詰め、周りの人たちをも追い詰めてしまったことがあります。
今ではそのことを深く反省し、自分自身を見つめ直し、以前より少しは周りと馴染めるようになったかなとは思いますが、いまだにトラウマや人間関係で悩むことが多々ありますし、周りには変人だと言われます。
きっと、私がモヤモヤしてしまった理由は、そんな自分を工場に投影しているからかもしれません。
工場はすみっコたちの優しさに救われて、新しい道を歩み始めますが、私はいまだに自分を許せず、人間関係でも悩みが尽きないため、前に進める工場が羨ましいのです。
しかし、すみっコたちが工場を救ったように、私にだって、きっと手を差し伸べている人がいるはずです。
というか、居るんです。
その手を取る勇気がないだけなのです。
そんな、普段は蓋をしている自分の気持ちに気付いてしまった私は、ぽろぽろと涙をこぼしました。
そして改めて、すみっコたちの優しさを知り、胸がきゅうっと苦しくなるのを感じました。
古くなったもの、壊れたものを捨ててしまうことも、自分がしてきたことでもあるし、されてきたことでもある。
ものを大事にすること、自分や周りの人を大切にすることを、教えているのではないかなと思います。
本当に、素晴らしい映画です。
稚拙な言葉しか出てこなくなるくらい、深く感動しました。
うん、でもやっぱり、労働シーンは社会風刺に変わりないので、どう頑張っても感動はしませんが。
映画「すみっコぐらし ツギハギ工場のふしぎなコ」ネタバレ感想!子ども向け?大人も楽しめる? ネタバレ感想まとめ
というわけで、子供向け映画と言いつつ社会風刺や大人の心の弱い部分を予想の斜め上から突いてくる、大変素晴らしい映画でした。
個人的には、ちょっと前に流行った“本当は怖い童話”を思い出します。
子供向けに作られたものだけれど、本当は怖い意味が隠されていたり、深い学びが得られる話であったり。
でも童話や昔話って、本来そういうものですよね。
私は幼少期、とても絵本が好きだったのですが、あの本たちも、今読むときっと違う解釈ができるはずです。
そういう意味では、この映画を観た子供たちが、大人になった時にどんな解釈をするのか楽しみです。
これからも、映画のすみっコぐらしが公開されたら、私は映画館に足を運ぶでしょう。
次はどんな学びがあるか、楽しみでなりません。
私が行った時は、一人で観に来ている大人が多くて、子供は居なかったけど…
追伸
特典の“くま工場長のほめスクラッチカード”を帰ってから削った私。
映画を観る前は「可愛いくまさん(ほっこり)」などと思っておりましたが、スクラッチを削って恐怖しました。
お前ッッッッ。
そうやってほめてブラック企業にスカウトするつもりかッッッ。
この記事を書いた人:池垣朱華(いけがき はねず)
映画好き。哲学好き。猫好き。最近ハマっていることは100均で可愛いシールを集めること。変人。